21世紀の幕開け
世界最大の時計製造グループであるスウォッチ・グループの一員となったロンジンは、すこぶる良好な状況下で21世紀を迎えました。1980年代、スイス時計産業の存続は非常に危ぶまれていましたが、ロンジンは製造部門での数々の再編成(SMHグループの示唆によって実行されたもの)、市場における厳密で明確な自社の位置づけ、そしておそらく、時計が機能的なオブジェとしてのステータスを失ったことも加わって、20世紀の終わりまで全体としてプラスの成長をとげることができました。スウォッチ・グループの一員として生産設備を合理化させたことに伴い、ロンジンの生産性は向上しました。
21世紀に入り、時計業界はまた新たな局面を迎えました。機能的なオブジェおよび現代的な生活様式における不可欠な備品としてのステータスを失った時計は、今や感情的な価値を持つオブジェへと姿を変えたのです。それと同時に、機械式ムーブメントが再評価され、今までとは違った印象が求められるようになりました。かつて電子式のクォーツ時計がスイス時計業界の存続を脅かしていた時期がありました。しかし、広報やマーケティングの努力によって、時計のステータスが変わったというメッセージが人々の元に届けられたのです。それは、機械式腕時計にはクォーツ式腕時計や機能的なだけの腕時計とは異なる価値観が内包されているというものでした。機械式腕時計は、伝統や昔から受け継がれてきた専門技術、そしてある種のライフスタイルといった側面を含む様々な意味を体現しているのです。新世紀になって、機械式腕時計は、1980年代の時計メーカーの経営者たちが思い描くことのできなかったような成功を得ました。21世紀初頭、ロンジンの販売した時計の中で機械式腕時計の割合は明らかに増加しました。機械式腕時計の人気が徐々に回復していく中で、ロンジンは時計作りの伝統に捧げられたコレクションを発表します。「Longines MasterCollection」と命名されたこのコレクションは、全てが手巻きまたは自動巻きの機械式腕時計からなっています。2007年、ロンジンはまた、卓越した時計作りの伝統を反映した前代未聞の時計「Longines MasterCollection Retrograde」を発表しました。機械式時計の復活といった、時計市場に影響を与える社会・文化的背景の進化を見守りつつ、ロンジンはスウォッチ・グループにおいてムーブメントの製作・製造を担当するETA社に機械式ムーブメントの開発を依頼しました。ロンジンの推進力をバネに、ETA社はレトログラード機能を備えた2つのバージョンの新しい自動巻きムーブメントをロンジンのために特別に開発しました。さらに同年、ロンジンはスポーツ界とのこれまでの絆をより一層深め、自社の価値観を反映するスポーツ競技に力を注ぎました。これと平行して、豊富なラインナップを揃えたスポーツ時計のコレクション、「Longines Sport Collection」を発表しました。これらの時計には、スポーツ競技での計時に深く関わってきたロンジンの伝統が強く反映されています。