ロンジンを導いた3つの柱
1970年代初頭、ロンジンにおける時計の開発にはいくつかの異なる方向性がありました。まずひとつめとして、伝統的な機械式腕時計の開発がありました。これまでの技術と競合する新しい技術が計時の世界に登場していたにもかかわらず、機械式ムーブメントに対する関心は消えなかったのです。ふたつ目は、電子技術とクォーツ。これらは徐々に生産全体の中に同化していきます。そして最後は、デザイン。時計の開発においてデザインの果たす役割はその重要性を少しずつ高めていきました。1972年、ロンジンは新しい時計のデザインをデザイナー、セルジュ・マンゾンに依頼し、その結果、斬新なソリッド・シルバー・ウォッチ シリーズが誕生しました。
スイス時計業界では電子およびクォーツ技術は一般的に生き残りのための次善策として受け止められていましたが、ロンジンは伝統的な時計製造、特に機械式ムーブメントの開発と製造を放棄することはありませんでした。1970年代、ロンジンは自動巻き機械式ムーブメントの動作原理を改善するための新しい技術方法を研究し続けました。1975年、ロンジンは、共軸二重香箱を搭載した自動巻きムーブメント、キャリバー「890」を開発しました。この新技術によってエネルギー伝達がより安定し、ムーブメントの作動と精度にプラス効果が得られました。二重香箱を装備したムーブメントには厚みが生じることになりますが、1977年に作られたキャリバー「990」は、2つの香箱を同一面上に置くことでその問題を解決しました。
当時ロンジンが取っていた企業戦略には、伝統的な時計製造、スポーツ競技における計時、工業生産の電子式時計という3つの柱がありました。ロンジンは優れた研究開発力を有するメーカーであり、革新的な機械式ムーブメントの製作やクォーツ式キャリバーの開発にその力を発揮しました。こうした状況の中、設立以来作り続け改良し続けてきた機械式時計と並んで、ロンジンは自社の時計のために独自のクォーツ式電子キャリバーの開発を目指しました。1978年、ロンジンは、酸化銀電池を用い、2極式ステッピング・モーターを装備したクォーツ式ムーブメント、キャリバー「950」を搭載した時計を発売しました。伝統的な時計技術の枠から外れたこのムーブメントは、その全てがロンジンで開発されました。
1980年代を前にしたこの時期、技術的側面は(売り込みの口上にもそれが用いられるほどに)ロンジンにとってなおも非常に重要な位置を占めていましたが、同時に、美的側面が確実に存在感を増した時期でもありました。洗練された美しさに対して贈られる賞が数多く創設されたという事実が、デザインの重要性が認識されたことを証明しています。ある観点から見れば美しさは時計の決定的な基準ではありましたが、長い間、時計の技術的な特徴がそれに優るものと考えられてきました。1978年、「Volubilis」シリーズの時計がバーデンバーデンのゴールデンローズ賞を受賞しますが、ロンジンにとってこれは4度目の受賞となりました。それ以前の1975年にも、ロンジンはオリエンタルなスタイルのスレーブ・ブレスレットからインスピレーションを得た時計「Cléopâtra」によって賞を獲得しています。